KMにステアリングを実装する際の一番のネックが動力伝達です。 脚ユニットに推進用モータを直結することができるならば全く問題ないのですが、 川崎ロボット競技大会の規定に従うためには、ギアボックスの出力を脚機構まで伝達しなければなりません。 しかもステアリング機構によって脚機構がどんな角度を向いていようと、です。
この問題を打開するために、LimitCycleではNakano方式と呼ばれる全方向移動メカニズムを採用しました(1)。
Nakano方式の機構図をFig.1に示します。
まずは車輪によって推進する場合で説明します。
Nakano方式では、車輪の上からステアリング回転軸に重ねて動力シャフトを通し、これを
ベベル歯車によってクランクシャフトに接続します。
このようにすることで脚機構の向きに関係なく効果的に動力を伝えることができます。
(1)実際には筆者がLCのために考案した方式が、後になってNakano方式に分類されることが判明したのでした
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| Fig.1 Nakano方式機構図 | 良い例と悪い例 |
動力伝達に加えて問題となるのがステアリング抵抗です。 ステアリング抵抗とは、文字通り車輪の向きを変える際に地面との引きずりによって生じる摩擦抵抗のことです。
ステアリング抵抗を抑えるもっとも安直な解放として、車輪を浮かせて向きを変えるという方法が考えられます。 幸いKMの脚機構は回帰期間で宙に浮くので、この瞬間を見計らって脚機構の向きを変えればいいわけです。 しかしながら、相手機との試合中にこのような悠長な動作を行うというのは現実味に欠けます。
Nakano方式では、ベベル歯車と車輪との相対位置関係を適切に設定することによって、 接地したままでもステアリング抵抗を理論上0とすることが可能です。 Fig.2に良い設計例と悪い設計例を示します。 Fig.2の○ようにすると、車輪の向きを変えた分だけ車輪自身が回転し地面を転がるので引きずりが生じません。
このように、適切に設計されたNakano方式ならば接地した状態でのステアリングが可能です。 しかしながら、これは車輪を仮定した上でのみ成り立つということを忘れてはなりません。 通常のKM用脚機構は、上下変動、接地位置変動、速度変動、機構の厚みなどといった、車輪が持たない、 ステアリングに不利な要素が多々あります。 そこで、車輪に極めて類似した特性を持つ脚機構が必要となるのです。
擬似車輪機構(2)とは、
車輪に似た特性を持つ脚機構の総称です(3)。
車輪に近い軌跡を描く脚機構が好まれる風潮は第6回大会頃から出始めていたように思われますが、
本当の意味で擬似車輪と呼べるものを搭載していたのは第8回大会のRocky4が最初でしょう。
翌年第9回大会で互いに異なる方式の擬似車輪を搭載したRocky5と破軍Xがスピーディかつタクティカルな決勝戦を演じたのは
まだ記憶に新しいところです。
今では筆者の把握するだけでも5種類の異なる擬似車輪機構が存在します。LimitCycleの擬似車輪もその一つです。
(2)人によっては車輪脚、タイヤ脚、疑惑脚などと呼ばれることもあります
(3)本物の車輪の使用が川崎において御法度なのはいうまでもありません
LimitCycleの擬似車輪は既存の擬似車輪が持たない特別な性質を備えています。 それは脚機構を構成する3つの足先がすべて同じレイヤー上で運動するということ、 そして動力の入力が片側からで済むということです。 この2点のおかげで脚機構全体を極めて薄く、シンプルに構成することができます。 これはNakano方式に採用する上で大きな利点です。
LimitCycleの擬似車輪機構の組立図をFig.3に示します。 動力シャフトに結合された円板上のクランクプレートに、3つの足先が放射状にベアリングを介してはめ込まれます。 それぞれの足先には左右に2つの小さなローラが付いています。 さらに、特殊な形状の溝(レール)が彫られた拘束プレートを用い、足先のローラをレールにはめ込みます。 すると、足先がレールに誘導されることによって、下半分では動力シャフトと同じ向きに、上半分では逆の向きに運動します。
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| Fig.3 組立図 | Fig.4 機構図 |