イオンクラフトの浮上原理
イオンクラフトの浮上原理についてはいろいろ言われているようですが、私自身は以下で述べる「イオン風説」が大方で正しいと考えています。
イオン風説というのは、大まかに言えば、エミッター−コレクター間の電場によりイオンや空気が下向きに流れ、その反作用でイオンクラフトが飛ぶという説で す。この 立場にのっとった詳しい説明は Blaze Labs Research Pages に掲載されています。このイオン風説が正しければ、イオン風となるべき空気がない環境(真空中)ではイオンクラフトは浮上しないことになりますが、実際に 真空中では浮上しないという実験結果が得られているようです。真空中のイオンクラフトについては Blaze Labs Research Pages の Lifters in vacuum & why they DO NOT work の記事が非常に参考になります。筆者の拙い訳でよければ、日本語に訳したものがこ こにあります。
ところで、Lifters in vacuum & why they DO NOT work にあるようなイオン風説の説明では、作用反作用の法則と運動量保存の法則を仮定しています。しかしながら、イオンとエミッターの間の電気的斥力、イオンと コレクターの間の電気的引力のような非接触力に対しては、作用反作用の法則が成立するのは自明ではありません(イオンと中性空気分子の衝突のような接触力 の場合には、作用反作用の法則も運動量保存則も問題なく成立します)。実際、一般の電磁気力に対しては、作用反作用の法則は成立せず、ニュートン力学の意 味での運動量も保存しません(電場と磁場の持つ電磁運動量を考慮す れば運動量保存則は成立します。詳しくは電磁気学の教科書(たとえば、太田浩一著「電磁気学T,U」(丸善)など)を見てください)。
ですが、イオンクラフトの場合、
ため、電極と荷電粒子の相互作用は瞬時に行なわれる(遅延効果は無視できる)と考えられ、また、
- 電極間の電場の時間変化はほとんどな く、
- 荷電粒子(イオン)と電極の距離が非常に近い
3. 荷電粒子の運動(電流)による磁場はほとんど無視できる
と思われることから電磁運動量も無視できるので、結局、作用反作用の法則も、ニュートン力学の意味での運動量保存則もほぼ成立しているとして問題ないと考 えら れます。イオンの速度が大きい(イオンの速度が光速に比べ無視できない)場合には、作用反作用の法則が成立しない影響が多少出てくるでしょうが、テレビの ブラウン管などを電源に作る小型のイオンクラフトではまあ無視できるだろうということが実際に計算からわかります(計算に興味のある人はここを見てください)。
参考文献・参考サイト
「図解 アリエナイ理科ノ教科書」 私はこの本を読んでイオ ンク ラフトを知りました。
Blaze Labs Research Pages 真空中の リフ ターの記事やリフター・シミュレータなど大いに参考にさせてもらいました。
FAQ about Lifters 上で述 べて ある Lifters in vacuum の実験に協力者としてあがっている Rolland Swank 氏のページです。
The Lifters Experiments home page by Jean-Louis Naudin イオンクラフトの作り方、電源の作製 など非常に多くのことが掲載されています。リフター・シミュレータはこちらでも入手できるようです。
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